星新一おすすめ作品ランキングTOP7

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星新一おすすめ作品ランキングTOP7

ジャンルはSFですが、深すぎる洞察力で描かれているため純文学のように濃厚な作品群です。ショートショートの天才と言われている作家であり、本当にサラリと読めてしまうのに、絶対に真似できない稀有な小説群。世界に誇れる、昭和を代表する文学です。星新一さんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。

 

 

第7位.星新一「ほら男爵・現代の冒険」

星新一「ほら男爵・現代の冒険」がおすすめの理由

ドイツに魅かれてしまう原因となる作品です。ミュンヒハウゼン男爵の子孫が現代に繰り広げる日常の物語です。「ほら男爵」は聞いたことありませんか?あの「ほら男爵」です。その子孫の物語になっているので、とても風刺がきいています。徹底的に客観的な描き方であり、どこか突き放したような取り扱い方なのに、なぜか読んでいるうちに感情移入してしまっていて、違う違うそうじゃない、などと主人公に一人突っ込みしたくなるような気分になります。でもよく考えたら、私たちの日常だって同じような物です。誰かが見ていれば、きっと簡単に「違う違うそうじゃない」と言っているに違いありません。そういう意味では、物語の深みだけでなく、読後に自分の成長を実感できる稀有な作品と言えます。この作品を、できれば思春期のうちに読んでおいて欲しいと思います。中学生の頃に読んでおいて、本当に良かったと安心できる作品です。

 

 

第6位.星新一「マイ国家」

星新一「マイ国家」がおすすめの理由

自分のマイホームを領土とする「マイ国家」を、独立宣言した男がいます。実はこの作品を読んだ後に、日本中でミニ国家や独立国が誕生したので驚きました。もちろん行政の洒落ですが、それぞれの地域社会が独自性を打ち出して遊び心で独立宣言をしたのです。そんな社会状況を予言したかのような作品です。ただし、星新一は現実の未来とは真逆の、むしろ徹底的にネガティブで恐怖の度合いを強めてしまった世界を提示していました。狂気としか言いようのない感じがします。でも、さらに時代が流れて現代の「おれおれ詐欺」と結び付ければ、なんて素晴らしいセキュリティ対策なのだろうかと感動してしまいます。時代の空気や、その時代の犯罪に反応して、吉にも凶にもなる作品です。星新一は未来を見透かしていたのだと気づかされます。同時に、未来はひとつではなく、常に選択肢があることも、教えてくれます。大切な一冊です。

 

 

第5位.星新一「ノックの音が」

星新一「ノックの音が」がおすすめの理由

短編集ですが、すべて「ノックの音が聞こえてくる」もしくは「その気配」で始まります。定番のテンプレートを設定してしまうことで、すんなりとその世界に溶け込める工夫を感じます。ある日突然、誰かがあなたを訪問してくる、そんなことは珍しいことではありませんよね。でも、もしも自分が家で留守番中の子どもだとしたら、どうでしょう。親には「出なくていい」と言われていても、つい出てしまったりしませんか。少なくとも誰が来たのか興味が湧いてしまうのではないでしょうか。大人だって同じです。訪問者があれば、期待したり不安になったりします。けれども、扉を開けなければ大事件には発展しないのかもしれません。問題なのは、訪問者が誰であろうとも、勝手に都合よく解釈してから扉を開けて会ってしまうことなのですから。相手の目的を吟味せずに、自分勝手に都合よく解釈してしまうことの恐怖を、ユーモアたっぷりに堪能できます。セキュリティ意識を学ぶことができた作品です。

 

 

第4位.星新一「おのぞみの結末」

星新一「おのぞみの結末」がおすすめの理由

SF小説の多くには、未来を予言したかのようなアイデアが凝縮されています。人間の想像力の素晴らしさと、想いは実現するという心理を教えてくれるかのようです。「おのぞみの結末」には、人間だれしもが「こうしたい、こうなればいいのに」と願いそうな題材が取り扱われています。特別な天才的な発明アイデアと言うよりも、日常の不都合や不満を解決してくれるアイデア商品のようなアイデアが満載です。でも、もしもそれが実現したとしたら、どうなるのでしょうか。願いかなった世界は、どのような世界なのでしょう。幸福になれるに決まっていると誰もが信じることのできる世界でさえもが、意外な結末を用意していたことに、驚かされます。これほどまでに知恵と皮肉に満ち溢れた作品群が、さらりと読めてしまうことが奇跡です。星新一は科学実験のように、人の願いと現実社会をブレンドして見せてくれました。驚愕の展開ばかりです。

 

 

第3位.星新一「妖精配給会社」

星新一「妖精配給会社」がおすすめの理由

タイトルから癒されそうな感じがしますし、実際に読んでみて癒されました。これほどまでに、読んで癒される星新一作品はないかもしれません。もちろん文章には毒が盛り込まれていますし、それは猛毒に違いないのですが、ピリッとする程度に容量を抑制してあるので、むしろ気持ち良くなれるのです。人生を早回しにして、最後には「満足できる人生だった」と言いたい人におすすめの作品です。なにもかもをひっくり返されてしまう喜びも味わえます。人生はめちゃくちゃです、だからこそ素晴らしいのです。でも一喜一憂する必要なんてありません。だって人生は、実験なのですから。さあ、勇気も努力も必要ありません、なにも意識しないで、本のページを開いてしまいましょう。妖精さんが待っています。あなたを優しい世界に導いてくれます。どん底なのに、楽園なのだと錯覚させてくれます。私の常識と正常な判断力を、ビビらせてくれた作品です。

 

 

第2位.星新一「未来イソップ」

星新一「未来イソップ」がおすすめの理由

イソップ童話をベースにして、子供の頃に親しんだ世界がそのまま星新一ならではのアレンジで料理されています。すがすがしいほどに皮肉たっぷりの世界が待っていました。これほどまでに楽しく読めたイソップ物語は、なかったかもしれません。あはは、と無邪気に笑いながら読んだのを覚えています。読んだだけではなく、友だちにも教えました。もうすでに読んでいた人もいます。まだ読んだことがなくて、これをきっかけに仲良くなったクラスメイトもいます。図書室に縁のなかった人たちが、自分の意思で図書室に入るきっかけになった、そんな作品です。ただし、後日談があります。それは子供から大人に変わる思春期になってからのことです。無邪気に笑えたのに、背筋がぞっとするようになっていったからです。読み返して再発見したというよりも、いつも胸の奥に「未来イソップ」が居続けて、思春期のドラマの途中で「ほらほら、だから言ったのにさ。あんなに教えておいてあげたのに」と、笑われているような気分になります。すごい面白くて、すごい怖い作品です。

 

 

第1位.星新一「ボッコちゃん」

星新一「ボッコちゃん」がおすすめの理由

世界的な名作「おーいでてこーい」を収録している作品というだけで、世界に誇れる最高傑作です。星新一を知っている人でも、何度も何度も楽しめてしまう、読み返すたびにその年齢に合った感動と思考を味わえる作品です。現代社会は、星新一がショートショートで描き切った世界そのままに、風刺に満ちていることに驚かされます。けれどもユーモアだったはずです。あれは、面白おかしいSFの物語だったはず、と問い詰めたい気分です。これから未来に待ち受けているAIの存在も、ますます便利になる世界も、その裏には常に人間を恐怖に陥れてしまうだけの要素があることを忘れないようにしましょう。ハリウッド映画のような面白さに満ちているのに、日本映画のような含蓄があって、素晴らしい良いんです。この作品群を読めば、その幸福で知恵に満ちた賢い世界観の余韻を、生涯ずっと持ち続けることができます。人生を豊かにしてくれる貴重な世界最高傑作です。

 

 

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