森見登美彦おすすめ作品ランキングTOP7

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森見登美彦おすすめ作品ランキングTOP7

京都を舞台にした、軽快でどこかファンタジックなタッチで描かれる風変りな学生やタヌキ達のドタバタ喜劇が見ていて非常に楽しい。しかしそんな中に、時折垣間見られる見られる悲哀やオカルト要素。そんな二面性が魅力です。森見登美彦さんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。

 

 

第7位.森見登美彦「四畳半王国見聞録」

森見登美彦「四畳半王国見聞録」がおすすめの理由

初めに言っておくが、これは短編集なのにほぼ四畳半神話大系の続編である。何を言っているか分からないと思うが、この本はそうなのである。京大の大学生のネガティブでエロスな悶々とした妄想の様な、そう言うのを書き綴った作品なのである。ここまでで私も自分で何をいっているんだと思うが、この妄想も他作品を読むとなぜかすとんと腑に落ちるのである。ナンセンスな空想に、意味が与えられるのである。本作と他作品との間に、正当なつながりが見いだせるのである。そう言うわけで最初に読むのもオススメ出来ないし、他作品が合わなかったと思うならまず読んでもわからないだろう。だが他作品に何かしらの面白みや共感があったのならば、これを読めばきっと笑えるはずである。短編でありながらスピンオフであり、ファンブック。本作はそんな立ち位置である。

 

 

第6位.森見登美彦「恋文の技術」

森見登美彦「恋文の技術」がおすすめの理由

主人公が送った手紙という形で綴られる本作は、最初の数ページではあまり面白さが分からないかもしれない。しかし、時に手紙を書いている主人公の姿を思い浮かべながら。時に受け取った相手の気持ちとなって読みながら。そう言った誰を思い浮かべながら読むかという事をしていくと本作の読み方はぐっと広がる。そして、その多くの手紙をいくつも読み解くうちに、この人からはこういう返事が返ってきたんだろう。この人からは手紙が返ってこなかったのだろう。と想像が膨らむ。明確な関係が読み解けるわけではない為割り切って読む人にはすっきりしなかったという人も居るかもしれないが、逆に深く考えて整理しながら熟読するタイプの人には新しい刺激となるだろう。なんせ主観や強がりの混じった手紙と言う形式だ。嘘や勘違いも混ざっている。読み解き解く時間こそを良しと出来る人には、ぜひ一度読んでいただきたい。

 

 

第5位.森見登美彦「ペンギン・ハイウェイ」

森見登美彦「ペンギン・ハイウェイ」がおすすめの理由

論理的に物事を考えようとするマセた小学生と、近所の歯医者に努めるお姉さんを主軸として描いたSF小説。町にペンギンが現れるようになり、その異変の原因を突き止めようとする小学生。その調査を進めるうちに、ペンギンはお姉さんと関係があることが分かってゆく。少年とペンギンと言うどこか和やかさすら感じさせる出だしだが、自体は思わぬ方向へと向かっていく。理屈っぽいのにどこか純真な少年は、読んでいくうちに読者を不思議なことが現実に起こると思っていた少年時代へと引き戻していくだろう。そして、魅力と不思議の詰まったお姉さんへ憧れ、惹かれていく。子供の頃に起きたら良いなと思っていたロマンへの旅は明るく、にぎやかに。そしてその旅の終着駅は、切なさを抱かせる。決して悲劇的ではない。ただ少し悲しくなる。でもそれは、明日へ向かうための力となる切なさと納得できるのが良いのである。

 

 

第4位.森見登美彦「【新釈】走れメロス 他四篇」

森見登美彦「【新釈】走れメロス 他四篇」がおすすめの理由

現代の京都を舞台に誰もが知っているあの名作を再現したらどうなるか、という非常にいい意味で馬鹿馬鹿しいコンセプトの作品が5本程載っている。表題作の走れメロスは、当然街中を全裸で走る。しかし、メロスの様なカッコいい理由ではない。ある意味真逆の理由で走る為、状況も合わさり完全にコメディと化している。かと思いきや、状況は現代的ながらも十分ミステリーしている藪の中や、作家の悲哀を感じさせる山月記。そして成功とその対価の喪失を突き付けてくる桜の森の満開の下と言った、真面目にリスペクトしていることを一目で分からせて来る作品も含まれている。原典へのリスペクトを感じることができ、またこれを読んだ後で原典を読むことによって今度は逆にそれが書かれた時代背景に思いを馳せることも出来るのではないだろうか。コメディとシリアスと言う森見作品の魅力をこの一冊で両方堪能することができる一冊である。

 

 

第3位.森見登美彦「四畳半神話大系」

森見登美彦「四畳半神話大系」がおすすめの理由

主人公の大学生が、憧れの女性とお近づきになろうとするという話なのであるが、この作品毎回主人公の所属サークルが変わるのである。つまり一章毎にパラレルワールドの話なのであるが、どの世界も主人公が思い描くようなバラ色の大学生活になることは無い。どの世界でも、大概は各サークルや人間関係の闇に触れて騒動が起き、大差ない落伍者のような大学生活へと落ち着くのである。ではそんな作品を、わざわざ章ごとに区切って1作品として繋げる意味があるのかと言われればこれがきちんとあるのである。主人公の起こす騒動が、各世界に微妙な差異を起こして、最後の最後に文字通りそれらが全て繋がるのである。感動的なハッピーエンドではあり、爽快感は非常に高い。絵面は想像したくないのだが、それもまたこの主人公らしくて良しである。馬鹿馬鹿しくとも、終わり良ければ総て良しなのだ。

 

 

第2位.森見登美彦「有頂天家族」

森見登美彦「有頂天家族」がおすすめの理由

京都を舞台に天狗とたぬきと人間が化かしあう、というキャッチフレーズに違わず3すくみの生き物達が大騒動を繰り広げる作品である。亡き父の跡を継ぎたぬきの長になろうとする長男、蛙となって井戸に引きこもる次男、楽天的で天狗に恋心を抱く主人公の三男、臆病者の四男。この4人が、長を巡る謀略に巻き込まれる中で、人間に食われてしまった父の真実を知ることになるのである。と言っても、本作はそんなサスペンス的なものではなく、人間社会に混じって生きたり、イベントを楽しんでいるたぬき達の様子が主である。天狗もたぬきも人間も同じ町で生きているという作風も、京都と言う町が持つ神秘性故かすんなりと受け入れることができる。そしてそんな日常の中の要素を少しずつ使いながら、最後の大事件に兄弟全員で挑む姿に感動を覚える。読み終わった後にはきっと言うであろう。面白きことは良き事なり、と。

 

 

第1位.森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」

森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」がおすすめの理由

本がボロボロになるまで読み返したと言うのは他著者のものも含めて今のところこの一冊だけです。大学生が憧れの黒髪の乙女に告白するまでのすれ違いが、春夏秋冬のイベント毎に綴られています。春は新入生歓迎の飲み会、夏は古本市、秋は学芸祭、そして冬は流行り病の風邪。裏路地に入ればファンタジーと言った感覚で、現実のイベントの話ながらも一つ道を入ればそこは異世界のように表現されています。謎の電車の中で伝説の酒を飲み比べたり、本の為に我慢大会が行われたり、学芸会の劇が大学一つを丸ごと飲み込む規模のものとなったり、風邪がそれまでの登場人物のほぼ全てをダウンさせるような危険なモノだったりと。そんな現実と非現実のバランス感覚と、そのどちらに巻き込まれてもお構いなしの黒髪の乙女。そして、振り回されながらも一つの目的のために一心に邁進する主人公は、馬鹿馬鹿しいながらも最後にはつい応援してしまいたくなる様な魅力があります。

 

 

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