辻村深月おすすめ作品ランキングTOP7

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辻村深月おすすめ作品ランキングTOP7

ミステリーが主軸にあるが、大人と子供の境にいる高校生大学生の等身大の痛みを書くのがとてもリアルで上手な作家だと思う。どの作品も読んでいて心が痛くなることもあるが、ものすごく登場人物に共感できるところも多い。辻村深月さんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。

 

 

第7位.辻村深月「光待つ場所へ」

辻村深月「光待つ場所へ」がおすすめの理由

他作品に出てきていた登場人物たちがそれぞれ出てくる短編集。辻村深月が作品に出してきた登場人物一人一人の背景を書いていないところまできちんと考えていたんだなと実感できる。そしてそれぞれに繋がりがあって、辻村深月の世界はこういう横の繋がりがあって、こういう時系列で進んでいっているんだなと補完できる作品で読む価値あり。「冷たい校舎の時は止まる」に出ていた清水あやめの話は、あの高校生のときの事件からも彼女たちは急にいろいろと悟って大人になるんじゃなくて挫折やいろんな思いをしながら大人になっていくんだなと何だか安心した。鷹野への片思いをあの後もずっと引きずっていて、そしてやっとそれを手放して次の恋にすすむ話。何か大きな動きがある話ではないけれど、清水あやめの人生を描くには絶対に必要な話だったんだろうなと思う。シリーズを読んだ人にはぜひ読んで欲しい作品。

 

 

第6位.辻村深月「ツナグ」

辻村深月「ツナグ」がおすすめの理由

亡くなった人と会える時間、それを繋ぐ役割、現実にはありえない設定だからこその各話優しい話だった。その中でも1番好きだったのはいなくなってしまった婚約者に会う話で、婚約者がやっぱり死んでしまっていたことも、忘れても良いから前に進んでほしくて婚約者が会うことを決めたと聞かされる場面も、死んでいったときの話も、悲しくて、でも最後は優しい気持ちになって、読みながらボロボロと泣いてしまった。繋ぐ役割を各話で果たしてきた歩美の話は、最初に出された両親のことは辛いものだったけど最後に歩美が出した結論に祖母も救われたと思う。祖母が血縁としても先代の使者としても歩美を支えようとする姿もとても良かった。少し前に映画化もされていたが、映画は観たが原作は読んでいないという人にもぜひ原作の雰囲気も味わってもらいたい。

 

 

第5位.辻村深月「凍りのくじら」

辻村深月「凍りのくじら」がおすすめの理由

SF:少し不思議。この作品を読んでから藤子・F・不二雄作品を見かけるたびにこの言葉と、この作品を思い出すようになった。主人公はこの歳にしては落ち着いていて、悟っていて、何にも執着できなくて、どう見ても可愛げのないどこか歪んだ女の子。でも少しずつ執着や感情を動かす様子が見えてきて、だんだん可愛く見えてきて、読み始めた頃よりも読み終わった時の方が何倍も彼女のことが好きになった。また、出てくる主人公の彼氏、若尾は年の割にとても幼稚で呆れてしまうほどに最低なやつだと思うのだが、ああこんなやついるなと思えてしまう。どんな登場人物も自分の身の回りの人と重ね合わせられるからすごい。そして藤子先生をリスペクトしているこの作品にもSF要素はたくさん散りばめられていて、辻村深月自身のSFへのこだわりが感じられた。

 

 

第4位.辻村深月「名前探しの放課後」

辻村深月「名前探しの放課後」がおすすめの理由

未来に起こる同級生の自殺を阻止するために今まで関わりのなかった同級生を含めてみんなで協力する話。自殺するかも、という焦りはあるが他の作品に比べると重苦しさが少し和らいでいる気がする。同級生で集まって水泳の練習をしたりピアノの練習をしたり、ジュブナイル色が強い小説だ。主人公たち「いつか」「あすな」が名前の由来を話す場面がとても好きで印象的だ。そしてこの中の登場人物の1人にすごく謝りたい。読んでいる私もすっかり騙されて終盤のネタバレまでずっと誤解してあまり好きじゃない人物だったのだが、実際はとても良い子だった。この子の子供の頃のエピソードが群を抜いて好きになった。また、この作品も他作品とリンクしているところがある。伏線はあったのに最後の最後まで読者を騙してわかったときの衝撃を楽しませてくれるのが本当にすごい。

 

 

第3位.辻村深月「子どもたちは夜と遊ぶ」

辻村深月「子どもたちは夜と遊ぶ」がおすすめの理由

連続した殺人事件は身体的にも心理的にも痛々しい描写が多く、猟奇的で理解ができない部分もたくさんあるけれど、出てくる登場人物たちの気持ちはほとんど理解できるし納得できるという不思議な気持ちになる。こんなに異常な事件を続けていく浅葱の背景も知れば知るほど逃げ道が無くて辛くなってくる。浅葱とやりとりをしている相手はいったい誰なのか、既に出てきている登場人物の誰かなのか、見逃さないように読み進めているうちにどっぷりこの世界にはまってしまった。最後はそうきたか、と想像していなかったとこらに答えがあって驚きだった。どの登場人物も好きだが、その中でもゼミの秋山教授が1番好きだった。自分のゼミの生徒が傷つけられたときに自分は利己的で傲慢だと言いながら怒りをあらわにして行動に出してくれる教授が本当に素敵だと思った。謎解き要素も強いのでミステリーが好きな人はぜひ読んでみてほしい。

 

 

第2位.辻村深月「冷たい校舎の時は止まる」

辻村深月「冷たい校舎の時は止まる」がおすすめの理由

初めて読んだ辻村深月作品。よくある少し怖い話かと思いきや、高校生たちの悩みを深く掘り下げていてとても深い話だった。個性が強い登場人物たち、最初は個性がてんでばらばらでまとまりがない気がしたけれど、読み進めていくてみんな良い子で結束力が強い。1人1人のことが作中で掘り下げられて人間関係だったり勉強のことだったり家庭のことだったり悩みを持っていることが描かれていくにつれて、どの子に対してもこんな子いるなと納得できてその気持ちに共感できる。自分にも昔はこんな不安定な時期があったなと懐かしくなる。読み終わった後は少し寂しくて物悲しい感じが残るけれど、スッキリとした納得のいく終わり方。閉ざされた学校で死んでしまった同級生の名前を思い出すというホラーミステリーで、しっかりと謎解き要素が含まれているのも魅力。

 

 

第1位.辻村深月「ぼくのメジャースプーン」

辻村深月「ぼくのメジャースプーン」がおすすめの理由

小学生の男の子が主人公で、他の作品よりも柔らかい話になるのかと思いきや、学校のうさぎが殺されて心に傷を負った幼馴染の女の子は学校に来れなくなった、うさぎを殺しても器物損壊罪にしかならないといういのちの重さを問題にする重い話。幼馴染のふみちゃんのために復讐をするか、いろんな人に話を聞くところに他作品に出てきた何人もの意見が出てきて、その作品を読んでいただけにその答えに納得する。復讐の方法は現実感のない嘘のような話なのにその他のことを現実のものでぎっしり固めているのでその温度差にハッとすることが多い。小学生の男の子が命や復讐という重い話について一生懸命考えていくのも余計に考えさせられた。小学生相手でも優しい言葉で誤魔化そうとせず、本人に考えさせたりいろんな人の意見を聞かせたり、しっかりと向き合ってくれる先生が本当にすごいと思った。命の重さを改めて考えるために読んでみて欲しい。

 

 

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