湊かなえおすすめ作品ランキングTOP7

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湊かなえおすすめ作品ランキングTOP7

イヤミス(読んだあと嫌な気持ちになるミステリー)の女王と呼ばれる湊かなえさんの作品は、独特の魅力があり、視点の置き換えが多く出てきます。それぞれの登場人物が感じた内容が集約され、紡ぎ出されるラストまで、駆け抜けるような疾走感が好きです。湊かなえさんのおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。

 

 

第7位.湊かなえ「夜行観覧車」

湊かなえ「夜行観覧車」がおすすめの理由

ひばりヶ丘という名前の高級住宅街を舞台に3つの家庭がそれぞれ絡み合いながら物語は進みます。
小島家はもともとひばりヶ丘に家を構える老夫婦の家で、妻のさと子はご近所でおこる騒動に迷惑しています。ひばりヶ丘ブランドを強く意識しているのです。遠藤家はもともとひばりヶ丘の人間ではなく、無理をして小さい家を建て慎ましく暮らしています。家は遠藤家の妻である真弓の希望が強く反映されており、ひばりヶ丘で暮らすことによりプレッシャーを感じる娘の彩花にとっては苦痛でしかなく、嫌なことが起こるたびに癇癪を起こしています。遠藤家の向かいの高橋家は夫が医師、妻の淳子は美人。子供たちもお受験で私立校に通うという、ひばりヶ丘らしい一家。ところが、ある日この高橋家で淳子が夫を殴り殺すという事件が起きてしまいます。その時、高橋家の長男・良幸は大学進学のためすでに家にいなく、長女・比奈子は友達の家にお泊まり会、次男・慎司はコンビニへ出かけており、夫婦しかいませんでした。でも…。その晩は遠藤家も小島家も高橋家から聞こえてくる男の子の叫び声と物音を聞いています。声には出さずとも、慎司が犯人で淳子はかばっているだけでは?という疑惑が消えません。しかも、慎司は行方不明なのです。ひばりヶ丘というブランド、一軒家、前妻との対決。それぞれの妻が抱える拘りが悲劇を生んだように読み取れ、拘りなど家族の笑顔を考えればどうでもいいと思えるものであればよかったのに、と思ってしまう結末です。湊かなえさんらしい、と言えばらしいイヤミスな一冊です。

 

 

第6位.湊かなえ「花の鎖」

湊かなえ「花の鎖」がおすすめの理由

テレビドラマ化されたので知っている人も多いかもしれません。話のネタバラシになりますが、この話は3代に渡る血縁者の物語になります。その3人は美雪、紗月、梨花。そして3人のそばに常に見え隠れするK。物語は3つのパートに分かれ、美雪→紗月→梨花の順に描かれます。美雪は夫の和弥と出会い、その死まで。紗月はKの正体である北神浩一との出会い、別れまで。梨花はKの息子との出会い、Kの正体や思い、親子3代に若たる物語のまとめまで。知らずに読むと時代がいつなのか時系列がわかりにくく、親子の物語であることにも終盤まで気づかないかもしれません。気付いた時はちょっとびっくりしました。物語の核であるKの正体・北神浩一とは、紗月の元恋人です。親の抱える確執により破局し、紗月の友人の希美子と結婚しています。北神浩一は白血病にかかってしまい、紗月から匿名という条件で骨髄を移植し、一命を取り留めることになります。(実は紗月と北神ははとこです。)それからは、毎年移植を受けた日に花束を送り続けています。死後は、息子を通し、紗月の娘である梨花の援助まで続けているのです。もともと愛した女性、親の問題で別れることになった紗月への密かな想いが見え隠れし、深い愛が感じられるものの、個人的には希美子が少し不憫に思えました。

 

 

第5位.湊かなえ「物語の終わり」

湊かなえ「物語の終わり」がおすすめの理由

空の彼方という未完の物語が次々と人の手に渡り、その人なりの結末を考えていく、という短編集です。作りが珍しくて面白く、連続性があるので一気に読めてしまいます。湊かなえさんらしい、視点の変え方でそれぞれの登場人物の今置かれた状況からか、物語の結末は変化していきます。冒頭は小説・空の彼方についてです。絵美は北海道に住んでおり、恋人の公一郎(ハムさん)もいます。夢を追い、東京へ向かおうとする絵美を待ち構えていたのは公一郎だった…。物語はここで未完のまま終わっており、このあと、絵美はどうなるのか?それぞれの主人公が答えを導いていくのです。「一度は家に連れ戻されるも最終的には理解してもらうことができ、東京にでる。」と考えた人や「ハムさんと家に帰り、東京に行かなくても夢を諦めることではない。この場所で夢を追い続けるのだ。」と考えた人もいます。「東京など関係なく、単純に、やりたいか?やりたくないか?だけでいい。」と考える人、「とことん今ある悩みに向き合うべきだ」と考える人、「絵美は東京へ、ハムさんは北海道で今までのように働く」と切ないものの現実的な結末を考えた人、様々な物語の終わりがあり、その全てが人生の可能性としてあるということです。そして、結末はこの物語は現実だということです。絵美が選んだ道が、今の絵美を作り、孫の萌へとつながり、この空の彼方という未完の作品が生まれたのでした。読了感が良く、イヤミスで有名な湊かなえさんの新境地を見た気分になった作品です。

 

 

第4位.湊かなえ「Nのために」

湊かなえ「Nのために」がおすすめの理由

杉下希美は青景島という小さな島出身の大学生。野バラ壮という古いアパートに暮らしています。そこで知り合った安藤望、西崎真人と、同じ青景島出身の成瀬慎司。名前にNがつく4人が絡む殺人事件に、それぞれの視点で迫る物語です。事件の真相はたった1つなのに、この本を読みながら考えると色んな見方ができるのですごいです。やはり、人間は複雑な生き物で、立場が違えば正義も悪に、悪も正義になるのだと思います。物語を通して、テーマは「愛」です。究極の愛は罪の共有と言い切る杉下、激しい虐待を受けてきた西崎にとっては愛は暴力を正当化するための道具ではないことを証明したいと願っています。安藤は2人の過去を知らず、仲間に入れてもらえなった寂しさを感じ、独自に真相に迫ろうとします。でも、安藤は仲間はずれにされてるわけではありません。未来がある安藤を、巻き込みたくないという友情があったからこその判断でした。成瀬は杉下の罪の共有の相手です。(実際は杉下の勘違いなのですが)杉下に好意を持つ成瀬は、杉下の為にと事件に巻き込まれていきます。結末は、事件の真相を知る2人が隠し通すことで真実が捻じ曲げられます。そうしたかった西崎の気持ちがわかる杉下が、「罪の共有」をするのです。10年後の描写がとても寂しく、みんなに幸せになって欲しかったなと思いました。

 

 

第3位.湊かなえ「白ゆき姫殺人事件」

湊かなえ「白ゆき姫殺人事件」がおすすめの理由

日の出化粧品という会社の看板商品は白ゆきという石鹸でした。そのことから、この会社に勤める三木典子が殺された事件は、典子が美人であったことも手伝い、白ゆき姫殺人事件などと呼ばれるようになります。物語は、出版社の記者である赤星が取材した内容をベースに展開していきます。容疑者として名前が挙がったのは典子の同期の城野美姫。名前がまるでお姫様のようなのに、顔は地味。名前と顔が三木典子と反対であることを揶揄されたことや、彼氏を典子に取られたことなどを理由に美姫が犯人であるかのように語る同僚たちの証言が続きます。美姫の大学時代の友人は、反対に美姫がどんなに優しくて純粋であるか、人を殺すなんてとんでもないといった内容を手紙で送り、抗議します。美姫の地元で聞き込みをした際は、美姫の親友である夕子(ダイアナ)が美姫の優しさについて語る一方、近所のおばさんたちは明神様の祠を呪いの儀式で燃やした、恐ろしい子といいます。ここまで城野美姫という人間は人によって多様に映っていたことがわかります。人ってそういうところがあるんだとリアルに感じさせる湊かなえさんはやっぱりすごいと思いました。最後は城野美姫本人の手記です。ここにきて、本当の犯人がわかります。静かに終わりを迎える事件ですが、残された全ての人にとって虚しい結末となり、イヤミスと言うにふさわしい作品だと思います。

 

 

第2位.湊かなえ「母性」

湊かなえ「母性」がおすすめの理由

湊かなえさんの作品の中では珍しく、殺人事件が絡みません。主人公は娘・清佳(名前は最後まで登場しない)。母親の母親(主人公から見た祖母)が火事で亡くなったあたりから母はおかしくなっていきます。もともと本当はおかしかったのですが。母親は、母親になりきれず娘でいられる祖母に依存していました。そんな祖母が火事の時に娘(孫)を助ける為に死んだことを受け入れることができずにいた母親と、そんな母親に愛して欲しくて懸命に努力する娘。火事の後は父親の実家に入り、姑とも折り合いがうまくいきません。父親は蚊帳の外で、息苦しさからか別の女に逃げています。暗くて思い、でもそこら辺に転がっていそうな家庭の話で、読む手が止まりませんでした。娘が自分の為に祖母が亡くなった真実を父親の愛人から聞いた時の衝撃を思うとかわいそうでなりません。自分が母の1番大切なものを奪ったという事実に打ちひしがれた娘は母親の為に自殺することを選びます…。結末としては娘は死なず、結婚して妊娠します。冒頭に登場する教師が成長した娘なのです。自分ももうすぐ母となる今、母性とは何か?娘なりに答えを出すのでした。イヤミスの女王とも呼ばれる湊かなえさんらしい作品だと思いました。

 

 

第1位.湊かなえ「告白」

湊かなえ「告白」がおすすめの理由

衝撃的な作品だと思います。映画化もされました。冒頭から、「告白」が始まります。主人公である教師・森口悠子の娘・愛美が自身のクラスの生徒であるA(渡辺)とB(下村)に殺された、というのです。そこで、森口は復讐を始めます。愛美の父親はエイズ感染者です。その父親の血を2人の牛乳に入れたのです。ところが渡辺はむしろなりたい(母に注目してもらえると思っている。)と反省するそぶりを見せなかったので、次の復習を考え始める森口。一方下村は、森口の告白以来学校を休んでいます。母の異常な愛との狭間で母を衝動的に殺してしまいます。そして、心が壊れた下村は施設で記憶障害を起こし、自分のした行為を自分ではない誰かがしたように錯覚し、自分を軽蔑して過ごすことになります。下村に対する復讐は成功し、残るは渡辺です。渡辺は母親に異常に執着しており、森口は母親に目をつけます。そして、渡辺自らが作った爆弾で母親が死ぬように罠をかけるのです…。後味の悪さでは湊かなえさんの作品の中でも1番だと思う結末が待っています。仮にも教師である主人公が教え子に復讐する本作。教師である前に1人の母親として、どうしても許せなかった気持ちはわかりますが、何度も遣る瀬無い気分になるラストでした。

 

 

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